群馬の子どもの実態を報告する基礎報告書>2006-07 3

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I 保育の現場から

3 保育園の子どもたちと「絵カルタ」作りに取り組んで

小林 美代子(群馬子どもの権利委員会)

(1)子どものけんりカルタ

 群馬子どもの権利委員会は1993年に設立されました。以後ずっと「子どもの権利条約」の広報、普及を大きな柱として活動してまいりました。
 子どもの権利を擁護し、発展させることを目的に、子どもたちの日常生活の中で条約の精神が具体的に生かされることを願ってきました。しかし、あまりにも条約の文言が難しすぎて、子どもたちのもとへなかなか届けられないという思いも強くありました。そこで会では、「子どもたちにわかることばで!!」と考え、独自のパンフやカルタを作ってきました。
1996年  初版「こどものけんりじょうやく」
2001年  改訂版「こどものけんりじょうやく」
       パンフ「あそべあそべカルタ」
2003年  50音「子どものけんりカルタ」

 その後、絵札や読み札に子どもたちのオリジナル作品が加わり、現在(2006年)4種類の「けんりカルタ」が出来ています。

(2)「絵カルタ」作りに取り組んで

 並行してここ数年県内の保育園との連携が深まる中で、乳幼児の意見表明権への関心が高まっています。今年(2006年)6月、第5回「群馬保育のつどい」に参加するに当たり、担当する分科会のテーマを、乳幼児の意見表明権を考える「カルタであそぼう、考えよう子どもの権利」と決めました。
 ことばや文字をつかって自分の気持ちを表現したり伝えたりすることが十分にできない乳幼児、特に幼児にとっては、絵を描くことで個々の内面を表現することが可能なのではないでしょうか。
 群馬保育問題連絡会に加盟する各保育園にお願いして子どもたちに自由に絵を描いていただき、その絵を通して、今、子どもたちが何をおもい何をねがっているのか、また、大人はそれをどう受け止め、どう応えたらいいのかを語り合いたいと提案しました。
 呼びかけに対して各保育園から全部で175枚の子どもたちの絵が寄せられました。一枚一枚の絵には、一人ひとりの子どもたちと保育士さんがていねいにことばを交わしながら仕上げてくださった様子が細かく記されていました。子どもたちと保育士さんのやりとりの様子が鮮やかにとび込んできます。大きな感動でした。と同時に、その作業自体が保育の現場での幼児の意見表明権の保障であると思いました。絵が仕上がるまでの子どもと保育士さんの会話のやりとりにできるだけ忠実にカルタことばをつけ「絵カルタ」としました。
 「保育のつどい」の当日は会場いっぱいに175枚の絵を展示し、参加した子どもたちと、保育士さん、保護者の方、群馬子どもの権利委員会のメンバーがそれぞれに、歓声をあげながらはじけるような遊びぶりでカルタ取りに興じました。特に自分で描いた絵の内容を身振り手振りで解説してくれる子どもの姿は、参加者をおおいに楽しませてくれました。
 絵を描くことで自分自身を解放し、他者とのコミュニケーションを図りながら自らが成長する糧となるのではと思いました。
 175枚、一枚一枚の絵の向こうから、一人ひとりの子どもが背負っている日常のもろものおもいやねがい、よろこびや悲しみ、他者を思いやる気持ちまでもが伝わってくるように感じました。
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(3)子どもたちの心に向き合えるゆとりを

 子どもたちの心のひだにていねいに向き合うためには、大人の側に、精神的、身体的、時間的なゆとりが不可欠です。しかし、今回「絵カルタ」作りに協力してくれた保育園では、そのことの保障が大変困難なように思われました。
 個々の保育園や一人ひとりの保育士さんの熱意や善意、なみなみならない努力、私生活の犠牲などの上に、子どもにとって最善の保育を目ざす、極限的な日常が保たれているように思われます。
 これ以上はもう無理というようなオーバーワークの中で高い保育の質を維持しようと頑張っている保育園や保育士さんに対して今、行政からは冷酷な政策が次々と出されています。保育所や保育園の民営化、企業化が進められ行政の公的負担を軽減し、運営に経済効率が最優先されていきそうな空気です。
子どものカット  「子どもの権利条約」の精神とは最もなじまない事態が進行しています。

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