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 第79号(全16ページ)からの転載です。

パートナー通信

パートナー通信タイトル
2019年10月/No.79(通算95号)

 2019年度「総会」第2部企画 公開シンンポジウム 
「児童虐待から 子どもの命と心を 守るために」に60名参加
(2019年6月15日)
 前号に続き、パネリスト後半の発言やフロア発言・質問の概要を紹介します。

パネリスト2回目の発言
「防止策、市民・県民に訴えたいこと」から

パネリストの写真

◆茂木直子さん
 暴力を振るわれるために生まれてきた子など一人もいません。今、何がいちばん必要かと言えば、それは「教育」です。
 子どもをどう育てていいか分からない。妊娠したらどうしていいか分からない。「デートDV」という問題もあります。高校へ行って啓発活動をしていますが、今は中学生から必要だと思います。望まぬ妊娠をした人に虐待が多い傾向にあります。そういう悪循環の中でDVも虐待も起きています。
 加害者は「躾」だと言いますが、子どもの年齢に応じた話し方で伝えら れる方法があるはずです。突然叩く、それは教育ではありません。DVから 逃れてシェルターに入ってくる被害者も「これがDVだったんですか」と言う。加害者になる者にも被害者になる者にも両方に教育が、それも若いうちに、必要なんです。
 DV被害の母親の子どもたちも、虐待を受けた子どもたちも、心に大きな傷を受けています。勉強も分かりません。無料学習会を始めました。小さいときから心と学びのケアーが必要です。地域社会全体で見守っていく、大人が見て見ぬ振りをしないことです。
◆舘山史明さん
 「子どもの手続代理人」について話しましたが、まだあまり活用されていません。家庭裁判所には、心理学、児童心理学など優れた知識と権能を持った家庭裁判所調査官という専門職がいます。しかし、調査官がつくのは事件として裁判にかかった後の話です。事件化するために親の意思と離れて力になってくれる専門職、つまり子どもの手続代理人である弁護士を活用していただきたい。
 「子どもシェルター」を群馬にも開設しようと、群馬弁護士会子どもの権利委員会で取り組んでいます。「子どもシェルター」は、虐待を受けて居場所のない子どもたちが、着の身着のまま逃げ出してくることができる、勇気ある子が声を上げたときに受け入れる場所です。18歳未満は児童相談所がありますが、18歳・19歳の子どもの行き場がないのです。まず個室を与える。温かい食事を提供する。必ず担当の弁護士が付き、子どもとスタッフと弁護士が一緒になって今後のことを検討していける場となります。
 いきなり物凄い虐待というのは稀で、徐々に徐々に積み重なって酷くなっていく。意思がある子は逃げれば何とかなると、そういう意識を持ってもらうために、逃げる場を提供していきたいです。
◆西 晴美さん
 皆さんのお話から、ますます保育園の役割の大きさを痛感しています。乳幼児期は人間形成の土台づくりの時期。豊かな人間関係や自然体験、集団体験をする中でその子の人間性が決まるとも言われています。
 「子どもはこういうふうに育つんだよ、こういうことが大事なんだよ」と、子どもが育つことを通じて親御さんの意識を変えて育てていく役割も持っています。保育園では「早寝早起き」って毎日言っています。適切な睡眠が子どもの脳を育てます。子育ては脳育てですね。
 本当に愛されて子どもは育ちます。愛されないと心が育たない、心が育たないと身体も育ちません。何かやりたいなと思うものに出会ったとき、心が動くからやってみようと身体が動く。やってみて、できた。できたからうれしい。その嬉しさは自分への自信になります。自分を好きになります。自分を好きになった人は人に優しくなるんですね。「優しくしなさい」と言われてできるものではありません。
◆栗原真由美さん
 3人のお話のように、地域社会の大人が見て見ぬ振りせず、一言言ってあげる。親に言葉かけをし、温もりを与えてあげる。いきなり凄い虐待は起きない、本当にそのとおりですね。昼食の時間に子ども食堂の皆さんのお話を聞きました。地域に根ざして、親に関わり、子どもに関わり、声がけをして、地域全体で関わりあっていく活動は本当に凄いなと思いました。虐待の背景で話したように、親が孤立している、子育ての仕方が分からない。自分が育ってきた生活や関わり方しか分からないからそれが基準になってしまう。地域の皆さんに、先ずは関わってもらう中で、心配だなと思われたらすぐに通告、あるいは相談でいいのです、市町村や児童相談所に気軽に相談していただくようお願いします。
 「躾」と言われます。親がどんなに一生懸命で、かわいいと思っても、子どもの側から見てその子の心や身体を傷つける行為は虐待と言わざるを得ません。叩かれた子は怖いからすぐ治まる。でも本当のところは何が悪かったのか全く分かっていない。親御さんも深呼吸して落ち着く中でそのわけを説明してあげる。そうでないと次の時にもっと大きな声で、暴力的な行為が酷くなってしまいます。
 『短期の預かり里親』のチラシを配りました。昨年度は一時保護所が常に定員オーバー状態で、子どもに寄り添う配慮も届きにくいこともありました。数日でもいい、数ヶ月でもいい、子どもを家庭的な環境の中で温かく、時には個別の大人にしっかり関わってもらえることがとても大切です。関心をお持ちの方、地域の児童相談所に問い合わせください。

フロアからの発言
◎一連の虐待死事件で「児相たたき」のような雰囲気がありますが、児相の方においでいただいて良かったです。でも群馬には4箇所しかないんですよね。抱えている件数がどれだけ多いか。内輪話というか、悩みなどもいろいろ話してください。私たち味方します。 ◎相談件数が非常に多くなっているというが、児相の態勢は整っているのか?虐待する人は子どものとき虐待を受けていたという事例が多いと聞くが、それへの対応は? ◎子どもたちは信頼できないところでは本音を言えませんよね。1月の千葉の事件で、学校でどういうことがあったか分かりませんが、アンケートをお父さんに渡してしまったと聞いて、すごいショックで、怒りのようなものを感じました。「どうにかできませんか」と言っているその子の思いを学校はどのように受け止めたのでしょうか。絶対に許せないって思いました。子どもが困ったとき、本音で「ドウシタライイ? 今ワタシ、コウナンダ」と言えるところが必要です。児相も大変な思いをされていると思いますが、一時保護されたとき短時間で子どもとの関係が築けるか心配ですが? ◎虐待を受けた子どものその後に寄り添う活動をしています。課題は虐待をする親の問題です。地域社会で子どもを守れているところもありますが、「隣は何をする人ぞ」と言われるような難しさがあるように思います。地域社会の課題とは別に、例えば児相の職員を恫喝するような親、そういう親にどう寄り添っていったらいいか、これを真剣に考えないと虐待は絶対に無くならないと思います。

◆質問に答えて栗原さんから:
 子どもに関係するところはどこも大変ですが、事件があり注目され批判もあり職員も精神的にいっぱいのところもあります。でも、通常は、通告があると事実を確認して、虐待となるとまず子どもの身の安全を確保して、それから介入的な対応、支援、必要に応じて強く法的な対応になります。原則最長で2か月間の一時保護の期間、ケースワーカー、児童心理司、職員などが関わり丁寧な対応をしています。今日の皆さんのお話を職員に伝えるなかで頑張って仕事ができるかなと感じています。参加できて良かったです。

(まとめ文責:加藤彰男)


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