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 第76号(全12ページ)からの転載です。

パートナー通信

パートナー通信タイトル
2019年1月 /No.76(通算92号)

〔年頭の挨拶〕
「不寛容」を考える
群馬子どもの権利委員会代表  大 浦 暁 生

 あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
 早稲田大学名誉教授の増山均(ましやま・ひとし)さんといえば、子どもの権利条約第31条(つまり休息や遊びや文化的活動など)の研究と実践の第一人者ですが、このたび『大人と子どもの向きあい方』をArt.31から出版されました(税込1000円)。大人が子どもを人格ある人間と認め、理解をもって接することを基本的に説く本で、多くの人びとに読んでいただきたいと思います。
 この本の序文は「寛容さを失う社会のゆくえ」と題され、たとえば公園でスケートボードをして遊ぶ子どもたちの声が近隣の住民たちから「騒音」として訴えられ遊びが禁止になった例をあげて、こんなことをしていては大声をあげて自由に遊ぶのが当然の「子ども社会」が失われると警告しています。それは「子ども期」の喪失につながるのです。
 規律を厳しくして違反者には厳罰を課そうという「不寛容」のやり方は、学校教育でも強まっていると聞きます。群馬の公立高校で長く教師を勤めた箕田政男さんは、生徒指導を担当していたとき、アメリカから来たという「ゼロトレランス」(つまり寛容度ゼロ)の教育方針を校長から聞かされ、意見を求められたそうです。「反対です」と即座に答えると、「では、どんな指導がよいとお考えですか」と聞き返された。そこで、 「考えることの大切さを学ぶことだと思います。行動する前に結果がどうなるか考える、想像するということです」と答えたというのですが、教師勤めをやめて小説書きに専心し群馬県文学賞も受賞した箕田さんの、実にみごとな対応ではありませんか。
 このように、のびやかな若い精神の自由な活動を阻害する「不寛容」を容認することはできませんが、「不寛容」を貫き通す必要のあるものも存在するように思うのです。たとえば核兵器、これは絶対に容認するわけにはいきませんね。  1週間ほど前の1月8日、防衛省は中期防衛力整備計画に盛り込まれた主要兵器の単価を公表しました。1機116億円もするステルス戦闘機F35を45機も買い足し、ゆくゆくは147機態勢をめざすなど、アメリカ兵器の「爆買い」であり法外な「大軍拡」なのですが、きわだって目立つのは1基1224億円のイージスアショアです。
 この陸上配備型ミサイル迎撃システムを政府は2基買うと言っていますが、最近の朝鮮半島情勢から見てこれが使われることはまずないでしょう。いや、かりに日本列島周辺が緊迫した状況にあっても、ただアメリカの言うことを聞くだけで話し合いには消極的であり、「制裁!制裁!」とそれこそ不寛容に叫んでいるのでは、問題は解決しません。
 イージスアショア2基購入ぶんの予算2448億円を無利息で返還無用の奨学金に当てれば、毎月10万円の支給で1年間、20万人以上が恩恵を受けることができます。今年は選挙の年、国民の力で政治の基底を戦争から平和に変え、心のあり方を不寛容から寛容へと豊にしてゆくことはできないでしょうか。


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