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 第77号(全12ページ)からの転載です。

パートナー通信

パートナー通信タイトル
2019年4月 /No.77(通算93号)

シリーズ:
 『子どもの権利条約31条:
  余暇・休息、遊び・体験、文化・芸術』-③
子どもと創り出すあそびの世界
あそびと文化で子どもの未来をつくる・
子ども文化の発信基地 高崎子ども劇場

はじめに
子どもたちの写真 高崎子ども劇場は1972年に「子どもに夢を たくましく豊かな創造性を」をスローガンに設立した。2001年にはNPO法人の認証をうけ活動を継続している。生の舞台鑑賞と子どもの自治集団作りなどが主な活動の柱だった。現在は、すべての子ども達の、遊びや芸術文化の体験活動の場づくりと、子ども自身が創り出す自主的な活動を支援し、子どもが本来持っている豊かに育つ権利の保障と子どもの健全育成を目的としている。


子ども達の願いを実現するために学ぶ必要があった
 子ども劇場が「子どもの権利条約」に出会ったのは、国連で「子どもの権利条約」が採択された年だったと思う。子ども劇場の全国的なネットワークの中で子どもの権利について学ぶ機会があった。しかし、実際に学んだのは子ども達に求められる中で必要に迫られたからだ。

 子ども自身が自ら作り出すことを応援する、と考え子どもの活動を実施してきた。子どもたちの成長とともに子ども達の実現したい内容は複雑に、広いエリアを巻き込むものになっていった。それは、1990年から始まった県内の子ども劇場・おやこ劇場に集う中高生・若者の交流会だった。半年近く準備に集まり時間をついやし、2泊3日の交流会が終了する。
 数日後、「吉田さーん。家の子たち子ども劇場で遊びに行くって出かけて、まだ帰ってきてないよ」の連絡だった。 えっ!?? 実施責任者の私が知らない? それって、劇場の活動なの?
 子ども劇場で知り合った子ども達が自由に集まり、楽しいことを計画し、実行する。それって大人の許可が必要なの?
 子ども達と何が見つけ出せればいいのか。子どもの権利条約15条「結社・集会の自由」これだ! その当時、子どもに関わる大人は、子どもとの関わりを探る度ごとに、子どもの権利条約第3条「子どもの最善の利益」、12条「意見表明権」、31条「休息・余暇、遊び、芸術的生活への参加」などを学び、確認していた。他にも、子どものあそびのパートナーの若者とは、活動の見直しの折に触れ、ロジャーハートの「参加のはしご」(註)をひもといている。

 なるほど、子ども達も自由に集まったり、集団を作っていいんだ。その当時、高校生と話した内容は、親に心配をかけない、約束を守る、行き先を言うなど、信頼関係を築くための「知っている状態を作る」等、大人にとっても当たり前の事だった。その活動は7回を数え終わったけれど、子どもの要求実現の活動はその後も様々な形で展開されていった。


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それから30年 子どもと創り出すあそびの世界
 高崎子ども劇場は、子ども達のあそびの活動を子どもの声や子どもの状況から生み出している。仲間と遊ぶ楽しさ、作り出す喜びを子ども達にと、2001年から小学生を対象に長期休暇(春休み・夏休み・冬休み)に開催する総称「夏休みクラブ」を開始した。
 夏休みクラブは、3日間をかけて「夜祭り」を作り上げるというものだ。
 1日目に何がやりたいかを話し合い、やりたい子たちでグループをつくる。2日目はどんな準備が必要かを話し合い、作業を始める。3日目はお店の仕上げとお客さんを交えた夜祭りの開催だ。(他にも水遊びや鬼ごっこ、おやつづくり等、のんびりした時間も過ごしている。)
 この3日間の子ども達の頑張りは詳細に書かないと伝わらないと思うが、とにかく既成の物ではなく自分達で考えたあそびのお店になっている。

一例をあげると・・・
 3年生男子中心の「的あての店」

 割りばし鉄砲で的に当てる、スーパーのレジ袋を丸めている、輪っかにしている。何度も何度も何度も話し合い、作り直している。大人から見たら何にこだわっているのか分からない。子ども達曰く、輪ゴムが本当に当たったかわかるようにしたい、ということだ。結局、的はレジ袋で口をつくりその中に輪ゴムが入るという的にたどり着いた。



驚きの「かき氷やさん」
 さすがにかき氷は、遊びの要素・手作りの要素は難しいのではと思いきや、シロップはジュースを煮詰めたもの、そして、お客はくじ引きでシロップを指定される。ちなみに私は、味無しを引いてしまった。そんな具合で、年々進化し、つぎつぎと面白い事がおきている。

 2001年から始まった夏休みクラブ当初は、子どものお店も、大人には思いつかない斬新なお店が並んだ時期もあったが、いつの間にか、"ジュースや""落書きせんべいや""かき氷や"など、工夫もなく簡単にできるお店も増えてきていた。  「本気で遊んでこそあそび。そこそこ、やれることをする・・・何か、つまらないなー(事務局吉田心の声)」
子どもたちの写真 早速、若者と話し合い、子どもの活動の意義を再確認する。(子どものあそびのパートナーは若者と位置付けている)

  • 子どもたちが自ら考える。
  • 同年代の仲間と考え合い、話合い具体化を進める(人と関わる力・考える力)。
  • 何度でもやり直しができ成功体験につなげる。
  • 助けたり、助けられたり。
 そんなことが確認された。

 子ども達に、遊びにはルールがある。ルールを守るから楽しい、ルールは変えていくこともできることを伝えた。
 企画するお店は①遊びのルールはわかりやすいか。②楽しさが相手に伝わるような説明ができるか。③遊びの工夫は、自分たちで考えたあそびになっているか。
 子ども任せでなく若者も大人も楽しもう!積極的にかかわろう。そんな意気込みで、子どものあそびを後押しする"許可局許可係・許可子さん"を登場させ、子どもの意欲を喚起した。



子どもがたむろって企んで
 子どもたちの集まりの中には「だらだらの会」「たくらみの会」なるものもある。
 「だらだらの会」は中学生になる子ども達から「俺たち、中学生になっても参加していいの?」と聞かれ、「何かやりたいことある」と聞き返すと「だらだらしたい」と返事が返ってきた。2006年から「だらだらの会」が始まった。「だらだらの会ってなにするん?」と要望した子ども達が聞く?「何もしないよ。だらだらしよ。」時には、たこ焼きパーティーに。時には若者と進路について真剣に。時には、まったり。お茶とゲーム(ボードゲームやカードゲームなど)、その時の気分にまかせ楽しんでいる。
 2017年からは「たくらみみの会」が始まった。発案は若者だったが内容は参加する子ども達が作り出している。
 「たくらみの会」は、話し合いながらあそびを作り出す体験を積み重ねてきた子ども達に、若者から、「子どもあそびバザールのオープニングたくらまない?」と切りだした。「やるやる」とそれはものすごい勢いだった。メンバーから「たくらみメンバーは誰なのかを知られてはいけない、知られたら企んでいることがばれちゃうよ。」たくらみの内容は家族にも内緒だったと聞く。

 「皆で作り・あそぶ」体験が、子どもや若者に蓄積され、「自分たちが楽しむ」から、「皆が楽しい」を自然に考えていけるようになったと思う。バザールのオープニングは、たくらみの会企画の"信号戦隊信号ジャー"。会場に侵入している悪の軍団を倒すという劇で始まった。来場者が今からバザールが始まることが分かるような内容で、楽しさが伝わるものを意識して話し合いが進んでいった。(アイデアが泉のように湧いて出て、若者がそれを書きとった。)
 参加者が楽しむためには、来た人・来た子が"何をすればいいかが分かること"が大事で、「意味が分からなかった」ということのないように準備を進めよう。子ども達も若者も主催者としての心配りが出来ている。何を大事にしているのかが体験を通してしみついていると、しみじみと実感した。



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「あそびや」はじまる
 人と関わるのが苦手な子、なかなか遊びに入れない子、何すればいいと指示を待つ子、楽しく遊んでいるグループに水を差す子、衝動的で乱暴な子、沢山の子ども達と出会ってきた。
 子どもが安心して心をゆるしてあそべる環境はどんな所なのか、考え試行錯誤しながら、知恵を集め子ども達の居場所づくりを進めてきた。前出の子どもにとって遊びとは・遊びの効能とはなど、長年にわたり若者の力を借りて見つけてきた。
子どもたちの写真  言葉で禁止したり静止したりするのではなく、大人の側が変わる・あそび場の始め方を工夫する、子ども達への声かけの工夫をする、遊びの質を吟味する。 子どもの気になる行動を見逃さず、子どものあそびの入口はどこなのか探し続けてきた。
 新しい環境の中で、子どもにとっての安心を確保する。若者とのやり取りから生まれたのが「あそびや」だ。トランプや人生ゲーム・オセロにUNOそんな身近なものがあることで「これ知ってる」「教えようか」「一緒にやろう」「混ぜて」と関わる言葉が出てくる。今では沢山のボードゲーム・カードゲームを常備して少人数でも大勢でも遊べる道具をそろえている。


意欲のエネルギーをたくさんの子ども達に
 子ども劇場に来続けている子ども達を見ると意欲的で、周りの子ども達とも調和がとれ、助け合える。そんな生きる力を獲得している。
 昨年、「生きる意欲のエネルギーを貯蓄する」という子ども時代の発達課題の1つを学んだ。幼児期・学童期の人と戯れあい、あそび、助け・助けられる体験"小さな成功体験"が必要で、思春期をうまく切り抜けるためにも「意欲のエネルギー」を蓄えることが必要だ。この体験の積み重ねがあると"困ったことがあれば誰かに相談する"、"助けを求めれば必ず誰かが助けてくれる"。あそびの中にある小さな成功体験の積み重ねが「自分は大丈夫」という自信につながるという。
 そんな大事な子ども時代に遊びが消滅していないでしょうか。学校から帰るとあそぶ友だちがいない。安全な遊び場がない。ゲーム機以外のあそびを知らない。あそびを通して子どもが育つ。そんなあそび環境、一緒に創りませんか。地域で「あそびや」始めませんか。
子どもたちの写真

「高崎子ども劇場」の連絡先
住所 〒370-0069 高崎市飯塚町46-6
電話 027-386-6454 FAX 027-386-6453
HP  http://takasaki-kodomo-gekijou.org/

(註)ロジャーハートの「参加のはしご」
Roger A. Hart (1950 ~ ) ニューヨーク市立大学教授(環境心理学・発達心理学)
 子ども・若者の社会参加の様々な形態を、その自発性と協同性に色々な度合いがあることを説明するために8つの段階に分けてはしごの形で図式化したもの。参加の仕方には多様性があり、上段のほうが必ずしも良いというわけではない。

 私たちが若者と活動を始めたころには子どもの意見を聞くことの意味や、子ども達があそびを創り出す等は実践も乏しく、自らの実例をぐちゃぐちゃと話し合うしかなかった。実際にはこの8段階をよくよく話し込みイメージを共有することから始め、6段階を目指した。


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