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 第77号(全12ページ)からの転載です。

パートナー通信

パートナー通信タイトル
2019年4月 /No.77(通算93号)

児童虐待問題で「緊急の提言」

 群馬子どもの権利委員会は、2019年3月14日に『子どもの命と心を守ろう-緊急の提言-』を発表し、翌15日に群馬県知事および群馬県教育委員会教育長に届けました。また、20日には内閣総理大臣、厚生労働大臣、文部科学大臣宛に送付しました。提言の全文を紹介します。


 2019年3月14日
群馬子どもの権利委員会
子どもの命と心を守ろう
- 緊急の提言 -

 「もうおねがい ゆるして ゆるしてください おねがいします」と懇願する船戸結愛さん。「お父さんにぼう力を受けています 先生、どうにかできませんか」と自らの危機を訴えた栗原心愛さん。いたいけな子どもが親からの虐待・暴力によってその尊い命を奪われるという悲惨な事件が続きました。逃げ出すこともできず不安、恐怖、痛み、辛さ、そして絶望感の中で身も心も傷つけられたまま命を奪われたことを思うと、言葉もありません。
 なぜ、2人の命が奪われてしまったのでしょうか。また、なぜ、大人たちは、本来救えるはずであった2人の命を救えなかったのでしょうか。この事実にしっかりと目を向ける必要があります。
 この2つの事件はけっして「特殊な事件」とは言えません。厚生労働省によると、2018年1年間だけでも全国の児童相談所の児童虐待相談対応件数は13万3千件を超え、群馬県では1079件となっています。周りから気づかれずにいる被虐待児の可能性を考えると、さらに多くの子どもたちが危険に晒されていると言えます。
 「しつけ」と称して虐待を繰り返す父親、子どもを守る存在になれなかった母親、背景に見えてくるDVなど、子どもの居場所になれない家庭の問題。児童相談所や学校など関係機関の態勢・対応や情報共有・連携の不十分さ、近隣の人びとが気づいてもなかなか関われない地域の関係性、さらには格差と貧困や過密労働といった追い詰められた状況が生み出すストレスが家庭の不幸につながるなど、子どもに関わる大人や社会の問題が指摘されています。
 このような背景を踏まえ、大人たちが第一に取り組むべきことは、危機的状況に置かれた子どもを救うために、その子の「最善の利益」になることは何かを考え、安全が確保されるまで細やかに手だてを講じて継続的に関わっていくことです。
 そして、その取り組みの根底に置いて、なによりも大切にしなければならないことは、「すべての子どもは一人ひとり皆、大人と同じようにかけがえのない一個の人格を持った人間である」、「大人の所有物でもなければ、支配できるものでもない」と認識することです。これは『児童憲章』(1951年制定)や、国連『子どもの権利条約』(1994年批准)に明確に示されている「子どもの人間としての尊厳」を守ろうとする子ども観です。
 市民の立場から子どもの権利を広め、守るための活動をしている「群馬子どもの権利委員会」は、二度とこのような事件が起こらないよう、緊急の課題として以下の提言を行います。

〔 提 言 〕

  1. 1 子どもに関わるすべての省庁、行政機関・社会福祉機関・教育機関は、緊急かつ継 続的にその職員に対して、『児童憲章』、『子どもの権利条約』、『国連子どもの権委員会の日本政府に対する第4・5回最終所見』など、子どもの人権に関する事項から、再度現場のあり方を見直し、虐待事件を未然に防ぐために必要な研修を行う。
  2. 2 ゆとりをもって一人ひとりの子どもにきめ細かな支援ができる態勢を速やかに作る。
    1. (1)保育所、幼稚園、学校、児童相談所、代替ケア施設などの職員を速やかに増やす。
    2. (2)児童福祉司については、その専門職としての任用と待遇の改善をはかる。
    3. (3)スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、ケースワ-カーなどの専門職を増員し、全ての保育・教育機関に配置できるようにする。
    4. (4)スクールロイヤー制度の導入を検討する。
    5. (5)そのための基準や予算の改善に直ちに取り組む。
  3. 3 県、地方自治体は、県民・住民に対して、『児童憲章』、『子どもの権利条約』などの詳しい内容を取り入れた子どもの人権に関する事項や虐待防止についての広報をよりいっそう丁寧に行う。その1つとして「母子手帳」に『子どもの権利条約』の条文を掲載することを直ちに実現する。
  4. 4 保育・教育機関は、子どもに『児童憲章』、『子どもの権利条約』などを分かりやすく伝え、子どもがそれを自らのこととして身につけ、日々の生活のなかで活かせるようにする。なかでも危機的状況に陥ることを避けるために、
    1. (1)困ったときには助けを求めて声を上げる。
    2. (2)我慢しないで逃げることも1つの方法である。
    などを子どもに伝える。
  5. 5 子どもの声や避難行動を受け止め、子どもを救うための具体的なスキルを社会全体(行政・関係機関・市民)で共有する。
    1. (1)子どものSOSを受け止められる社会を作るために、すでに救済活動を進めている組織・団体から具体的な受け止め方や対応策を学ぶ。
    2. (2)地域のいたるところに、「子ども駆け込み寺的スポットこどもSOS」を作る。子ども食堂、無料学習塾、児童館、放課後児童クラブなどが、子どもの居場所
    としてその役割を果たす。
  6. 6 国内法(民法など)に「体罰・虐待禁止」を明記する。
  地域の市民のみなさん、地域の子どもたちの見守り役として、子どもたちの表情や様  子を温かいまなざしで見守ってください。そして、もし「普段と違う」「元気がない」 という異変を感じたら、躊躇せずに、子どもたちの声に耳を傾けて、関係機関に相談す るなど、必要な手だてを講じてください。
    群馬子どもの権利委員会
代表 大浦暁生
〒371-0026
前橋市大手町3-1-10 群馬県教育会館3階
FAXのみ  : 027-235-8876
ホームページ: http://gkodomo.web.fc2.com/

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