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 第70号(全12ページ)からの転載です。

パートナー通信

パートナー通信タイトル
2017年7月/No.70(通算86号)

子どもにも大人にも心地よい居場所を
「あいおい子ども食堂」スタート!
芦田 朱乃 (ボランティアスタッフ)

はじめに
 こんにちは。今年4月から桐生市で「あいおい子ども食堂」がスタートしました。このたびパートナー通信で活動を紹介させていただけることになり、とても嬉しく思っています。ありがとうございます。


高い高い関心
 準備段階のスタートは2016年12月でした。発起人の丹羽が群馬中央医療生協の理事だったことから、無料学習支援「ひろせ川教室」の取り組みについて聞き、桐生でできる活動は…と子ども食堂の案が浮上しました。テレビや新聞で子どもの貧困と子ども食堂の取り組みがさかんに取り上げられ、同じ東毛地区にある館林の「あかるい未来ネット」の活動などが浸透してきていたため、周囲の関心が最初からとても高かったのが印象的でした。
 ボランティアスタッフとして、さまざまなバックグラウンドを持つ人たちが集まってくれました。調理師免許を持っている人、ネットでの宣伝に長けている人、買い物じょうずな人、子どもと遊ぶのがうまい人、会議の司会が的確な人、とにかくフットワークがいい人など、実に心強いです。
 1月にFacebookページを立ち上げたときには、最初の1週間で10人以上がボランティアや野菜の提供、募金箱の設置協力に名乗りを上げてくれました。同じように桐生で子ども食堂をと考えていた他の個人や団体ともつながって、協同したり情報交換したりする関係を作ることができました。


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子どもからお年寄りまで
 「子ども食堂」という名前を使っていますが、対象は「子どもからお年寄りまで」としています。年齢にかかわらず、安心して行ける場所が地域に1つでも多くあるといいと思ってそうしました。食の安全もできるだけ考慮し、有機農家さんから食材提供の協力を得たり、誰でも簡単に作れてインスタントではない、おにぎりやみそ汁の作り方を、食事に来た方と一緒に実践したりしています。
 利用料は、子どもも大人も無料にしています。子どもだけでなく、誰でも安心して来ていただけるようにするためです。そのために食材の提供や賛助会員の募集など、資金調達の方法も工夫しています。また、当日は会場に募金箱を設置し、余裕がある方にはカンパをお願いしています。
 目指すのは、誰もがゆったりと過ごせる地域の居場所です。できたての温かいごはんを食べ、ゆっくりお話しなどして、近所の人同士での交流にもなれば思っています。その一環として、人数が多いときは相席をお願いすることがあり、それがきっかけで会話が弾むテーブルもあります。1人ずつ来られた年配の方々が、相席になって話してみたら、同じ団地の人だったということもありました。
 また、会場内の一角にレジャーシートを敷き、子どものための遊びのスペースを作っています。食事を待つ間や食べ終わった後に、子ども達はここで自由に遊べます。一緒に遊ぶスタッフがいるので、お母さん達は自分の食事やおしゃべりを楽しんだり、遊びの輪に入ったりと、ゆっくり過ごしていかれます。


遊びのチカラ
 遊びのスペースは、子ども達が飽きないようにするためだけの場所ではありません。ここでは遊びのチカラを借りていろいろな交流が生まれます。たとえば、小学生の子が30代のスタッフと黒ひげ危機一髪をしていたら、60代の方も混ざって、3世代の笑い声が響くなんてこともありました。また、折り紙がうまくできたと各テーブルに配って回るような愛想のいい子もいて、「あらかわいい」「じょうずね」と会場全体を笑顔にしてくれます。すると、他の子どもも安心して自分の作品を見せて回るようになります。
 年配の方たちは、まったく知らない子に声をかけるのをためらうようなので、子ども達から声をかけてもらうととても嬉しそうです。少しにぎやかすぎるかと私たちが心配しても、「元気でいいね」「子どもの声を聞くと自分も元気になる」と温かく見守ってくれます。そういうふうに言ってもらえると、いつも子どもが迷惑にならないかとピリピリしているお母さん達の気持ちもほぐれるようです。
 初めて会った子と友達になったり、知らない大人と話したりすることは、子ども達のふだんの生活ではあまりない経験です。遊びを通じて、そうとは知らない間に楽しく経験を積めればと思います。

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子どもに仕事を
 あいおい子ども食堂では、少し意識して子ども達に仕事をお願いしています。今は「仕事」というと「できればやりたくないこと」というイメージができている気がします。でも本来の仕事は、だいじな意味のあることで、大変だったとしても達成感があり、能力や自信につながり、人にも感謝される誇らしいことのはずです。そういう仕事になるように意識しながら、子ども達にしてほしい仕事を考えています。
 たとえば、「食後に自分が使った食器をふいて汚れを取る」という仕事があります。この仕事のねらいは、会場の排水溝を詰まらせないため、食器を洗う人がとても助かるから、家ではお母さんなどがこの仕事をしていると知ってほしいからなど、いろいろあります。お説教にはならないようにと思ってまだうまく説明できていないのですが、徐々に伝えていってこの仕事の意味を感じてもらえるよう、知恵を絞っているところです。
 今、仕事があることで一番輝いているのはスタッフの子どもです。あいおい子ども食堂には今まさに子育て中の30~40代のスタッフがいて、その子ども達は、準備会議も当日も一緒に参加します。当日のオープン時間は11時から2時ですが、準備を含めると朝9時から6時間の長丁場。主体的にできることがなければ、すっかり飽きて苦しい時間になるか、手持ち無沙汰で思いついたことをして親にしかられるか…。でも自分にあった仕事があれば、役割ができて居場所になります。自分も楽しいし、人の役に立てると自信になるし、しかもほめられるし、一石三鳥です。  上の写真は「いらっしゃいませ」のポスターを作っているところです。折り紙で飾りつけをしたり絵を描いたりと、それぞれ工夫しました。他にも、イスや机を並べる、花を摘んでテーブルに飾る、入口やトイレなどの案内、遊びの時間に他の子に遊びを教える練習、モップがけ、子どもが手を挟みそうな場所の養生など、大活躍です。
 仕事をお願いするときは、強制にならないように気をつけています。一人ひとり好きなことや得意なことが違うので、いろいろ提案してみます。この子達は大きい子でもまだ小学校低学年なので、本人が興味を示した仕事を中心に任せています。興味を持ったことは自分からどんどん工夫して、大人の予想を超えるレベルでやってくれ、そういうときは生き生きと誇らしげな顔になっています。

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ここに行けば誰かいる
 近年、「無縁社会」「ぼっち飯」「ワンオペ家事」など、孤立化を示す言葉が次々に生まれています。1人1台の携帯電話を持ち、SNSなども急速に発達していますが、「関係性の貧困」といって、本当の自分を出せない、いざというときに頼れる人がいないといった問題が浮かび上がってきています。何かに困ったとき、年齢や背景の異なるさまざまな人との関係がないために、知り合いの中だけでは相談しても解決策が出てこないという課題もあるようです。
 そんな時代だからこそ、子ども食堂を、地域の人が同じ場所で一緒に食事をすることで、顔を見知って新しい関係を作れるような場にしたいと考えています。一朝一夕にはできないことですが、1回1回の積み重ねで、来た人がほっとできる雰囲気を作り、信頼される場所になりたいと思います。そして「ここに行けば誰かいる」と思ってもらえれば嬉しいですね。
 地域のみなさんには気軽に利用してほしいです。子どもにごはんを食べさせていると自分は食べた気がしないなんて、お母さんにはよくあること。たまには子ども食堂で羽を伸ばしてください。栄養のかたよりが気になるなぁと思っていたら、有機農家の方からいただいた旬の野菜たっぷりのメニューを味見しに来てください。野菜嫌いの子どもでも、いつもと違う場所だとつい食べちゃうかもしれません。スタッフ一同お待ちしています!

(文責:あしだあけの) 
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