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 第66号(全12ページ)からの転載です。

パートナー通信

パートナー通信タイトル
2016年7月 /No.66(通算82号)

2016年度「総会」(第一部:議事)

 5月21日(土)、群馬県生涯学習センター・第一研修室にて、2016年度の「総会」を開催しました。午前中に「総会・議事」を行い、2015年度の「活動のまとめ」「会計決算・監査報告」、2016年度の「活動方針案」「予算案」「役員案」を審議し、すべて原案通りに決定しました。『議案書』を同封しますので、ご活用ください。
 本会の発足のときから世話人としてご奮闘くださった八木清江さんが、2015年度末をもって世話人を退任されることになりました。長い間のご尽力に心より感謝申し上げます。

2016年度「総会」
(第二部:交流・討論会)

『子どもを誰ひとり見捨てない。
今、私たちに出来ること』

午後の第二部企画は、今年度もぐんま教育文化フォーラムとの共同で、交流・討論会『子どもを誰ひとり見捨てない。今、私たちにできること―「子どもの貧困」対策と支援をさらに進めよう―』を開催しました。県内各地の学習支援活動関係者、医療・福祉関係者、現・元教職員、行政関係者、県・市町議員、研究者、一般市民など95名が参加しました。
 2年続けて「貧困家庭の子どもの学習支援」の問題を取り上げていますが、子どもの貧困や格差の問題が深刻化するなかで、多くの子どもたちが、まさに「待ったなしの状況」に置かれており、この1年間のさまざまな活動の中で見えてきた課題を交流し、「貧困の連鎖」を断ち切るために、また、持続可能な対策や支援をさらに進めるために、何が必要か、そして、行政との連携をどのように進めるかなどが話し合われました。

 はじめに、「学習塾HOPE」の高橋さん(高崎)、「おおた女性ネット」の宗像さん(太田)、「ひろせ川教室」の深澤さん(前橋)、外国につながりのある子ども対象の教育支援「未来塾」の本堂さん(伊勢崎)から、この1年間の取り組みや課題の報告を受けました。
◆5年目を迎えるNPO「学習塾HOPE」は、子どもたちが住んでいる地域で教えてあげたいと、松井田、安中、吉井、倉賀野、玉村にも教室を開設して、中学生を中心に高校生の支援も始めています。入塾は無料で貧困家庭の子どもたちを優先して、1対1の個別指導を原則にし、可能な限り同一の講師が指導を受け持つようにしています。子どもたちの自主的な学習や人間的な成長を促し、保護者も含めた相談活動にも対応するよう配慮しています。
◆NPO「おおた女性ネット」の無料学習会は3年目を迎えます。ひとり親・不登校・外国人などの小・中・高の子どもたちが学んでいます。教科の学習に加えてコミュニケーション能力を高めるようなワークショップも行っています。フードバンク「三松会」と連携して毎月1回食品の配布をしています。今年度から太田市の貧困世帯への学習支援委託事業を受けました。


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◆群馬中央医療生協の取り組みとして前橋市の広瀬小学校区で開かれる「ひろせ川教室」は、地域の小学生を対象に今年2月にスタートしました。昨年度の白鳥勲講演で無料学習支援の重要性と緊急性を痛感した深澤医師の呼びかけで準備を始めました。市教委や地域の小学校との話し合いも丁寧に行い、学校を通して対象世帯へ案内を配布して、15人前後の子どもたちが参加しています。医療・福祉専門のスタッフにとって学習支援は始めての取り組みで、毎回、新しい問題にぶつかりながらも元教員のボランティア・スタッフの助言などを得て前進しつつあります。
◆伊勢崎市内で外国につながりのある子どもたちの教育支援を続けているNPO「Jコミュニケーション」は、伊勢崎市教育委員会の委託事業なども受けて、市内小中学校内の授業や日本語教室での支援と、校外での「子ども日本語教室:未来塾」などの取り組みをしています。未来塾では、学習言語としての日本語力不足への対応とともに教科の指導も重要な支援となり、1対1の個別指導が必要となっています。外国人世帯では保護者の日本語力不足、文化・習慣の違いや不安定雇用などから貧困と教育問題の世代間連鎖が起こりやすい。また、保護者の母国と日本との移動の事情によって、子どもたちは日本語ができないために勉強が分からない、自分のアイデンティティーが分からなくなるなどで、年齢相応の学力が身につかず、不登校・中退になったり、教育制度の違いから不就学になる可能性が高いなど、子どもたちの背景には困難な状況があるのです。


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共通して抱えている課題
①支援スタッフ・講師の確保
子どもたちの中には、学習面だけでなく精神面や生活面でもさまざまな困難を抱えている者も増えていて、1対1での支援・指導がどうしても必要になっていますが、それに対応できる数のスタッフを集めるのがなかなか大変な状況です。学生ボランティアも大きな力を発揮していますが、近頃は経済的な厳しさも増していてアルバイトのほうを優先しなければならないといった状況もあります。現役時代に培った専門的な力や貴重な経験を生かせる多様なシニア層の積極的な参加が期待されています。
②安定的な財政の確保
 子どもたちの「待ったなし」の状況に対して「無料」で支援するわけで、安定的に運営することが必要ですが、これを財政面で支えることが非常に難しい。補助金・助成金・寄付金集めに必死で駆け回っているのが実態です。「支援スタッフにせめて交通費だけでもだせれば・・・」という発言もあります。実情に見合った国や県・地方自治体の柔軟な対応・支援が強く望まれるところです。
③行政との連携
今回の企画に県および県内市町の関係担当者合わせて11名が参加してくださり、行政サイドのこの問題に対する姿勢がうかがえます。今年3月には「群馬県子どもの貧困対策推進計画」(平成28~31年度)が策定され、12市すべてで、すでに事業を進めている、あるいは取り組みを進める方向を出しています。町村部については県が関わって指導などを行う仕組みになっていますが、今年度、最大で10カ所の学習支援事業を検討しているとのことです。また、これらとは別に内閣府・文科省・厚労省・日本財団で事務局を構成している「子供の未来応援基金」について県の担当者からの紹介もありました。しかし、②の財政面での課題と重なるところですが、行政サイドでは「子どもの貧困対策推進法」や「生活困窮者自立支援法」などに基づく関係省庁の基準や予算の枠などによって、民間サイドで取り組まれている事業が望むところとの適合性に難しい点があります。草の根の取り組みの実情を知ってもらう意味でも、県や自治体に直接相談していくことや民間サイドのつながりをさらに広げ・深めて行政との意見交換の場を作るなどの取り組みが効果的と考えられます。


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県内各地に広がる支援の取り組み
 意見交換の場では、県内のさまざまな取り組みや課題、率直な思いなどが交流されました。
◎福祉の面から子どもの貧困・生活困窮者支援として始め、子どもの学習支援へと入っていった。自分たちの立ち位置が、福祉からなのか教育からなのか分からなくなる。生活保護や要支援世帯の子どもをと言われて、差別にならないかとも思った。行政のほうも福祉と教育委員会で距離があるように感じる。子どもたちのために高いところから見て欲しい。(安中自立支援"まなびや")
◎給食カフェをしている。給食メニュー380円、コーヒー150円で。子どもたちが「自己肯定感」を持てずにいるのが問題。勉強ができなくても"こんないいところがある"と言ってくれる先生を増やして欲しい。(子育て支援カフェ)
◎館林の子ども食堂を紹介したい。学校給食自校方式を求める運動から、貧困世帯の子ども学習塾、そして子ども食堂を始めた。市民の力で、子どもが"阻害されていると少しも感じない"学校・市政を作っている愛知県犬山市の教育から学びたい。(邑楽・館林子育てネット)
◎僕たちは「体験」という視点から取り組んでいる。「子どもの貧困」という言葉を、子どもたちの自然体験や生活体験の乏しさという問題と関連させて捉えた。学習支援・貧困対策も幅広い視点で見られるのではないか。いろいろなことに挑戦して少しずつでも成功体験を積み上げることが大切。児童養護施設でボランティアをしてきたが、子どもたちが求めていたのは学習ではなく"話相手"だった。信頼できる大人に子どもたちが出会えること、人と人をつなげる仕事をしたい。(NPO"あかぎの森ようちえん")


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◎外国につながりのある子どもたちの指導をしている。私の母国は子どもをちゃんと見てなかったので、犯罪の多い国、生活がしにくい国になっている。子どもたちがきちんと育つことが本当に大事。日本人であれ外国人であれ、一緒に地域で生活している、日本に対して力になっているのだから差別してほしくない。また、移民者として、もう私は外国人だと思っていない。地域の人として支援の活動をしている。外国人世帯の多くは核家族で、仕事に出かけ夜遅くて、仕事を休むとすぐクビになる。子どもを見てもらえる、支援してもらえるととても助かる。(Jコミュニケーションの指導員Lさん)
◎いろいろな活動を聞いて刺激になった。新しい話を聞けた。こういった活動の情報を貧困家庭にどうやって届けていくかが重要。まだばらばらで、一元化された情報が届けられないか。行政の方も来ているので、ある程度まとめて届ける手だてを考えてくれるといいのでは。(小学校教師)
◎人間の良心、優しさが根底にあって、たくさんの方が活動されていることに感動した。人間ってすごいな。だが一方で、このような活動が盛んになっていく裏返しで、教育行政が、あるいは貧困に対する政策が本当に貧しいのだなとつくづく感じてしまう。前橋市内で5つぐらい「寺子屋」というのが始まった。貧困家庭の子どもたちの支援と思うが、全校生徒にチラシが配られ希望者が参加している形なので、行ってほしい家庭の子どもが参加していないなどの課題もあるようだ。厳しい現実を前にこのような活動も大事だし、こういう思いをしながら活動しなくても子どもたちが大切にされる行政を作らなければいけない、両面を大事にしたい。(中学校教師)


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◎私の大学にはボランティアセンターがあり、福祉系の大学なのでさまざまなボランティア活動の募集がきている。学習支援に関しては、自分が教えられるだろうか、どう関われるだろうかと言った不安もある。顔の見える関係が学生としても一番行きやすいのでぜひ来てください。(大学生)
◎教職経験者の出番かなと思う。中には40年近くやってもう燃え尽きたという人もいる。学校はそれくらいハードな仕事だが、やはり私たちの出番と思う。退職教職員の会で宣伝して指導者として協力できればいいと思う。貧困の連鎖は社会問題であり、どこかで止めなくてはならない。いろいろなボランティアの取り組みが分かって来たが、本来は行政が中心になって取り組むべき課題だと思う。民間と行政が協力できるいいシステムができるといいのだが。(退職教職員)
◎シルバー世代として貧困の問題に何ができるかと考えて参加した。大学で教えていた。科学的に、学問的にものを見る基本を養うことが、断片的な知識より大事。入試での学生を見ているとその辺がおざなりのような気がした。狭い意味での中学・高校の学習はほとんど忘れているが、その基本的なところを指導するというニーズがあればと思う。(元大学教師)
◎放射能から子どもを守る運動から始まって地域づくりのさまざまな活動をしている。子育て支援もしているが、いろいろな相談を通して「孤立」の問題がある。貧困の問題は表に出にくい、一番口にしにくい問題である。子どもたちともさまざまな活動をしてきたが、子どもたちと高齢者のつながりの大切さを思わされた。おじいちゃん、おばあちゃんの言葉で、親とは違う言葉で声掛けしてくれることが、子どもたちの力になる。地域をつなぐということが大事になってくる。 (Annakaひだまりマルシェ)

〔まとめ文責:加藤彰男〕

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群馬県「子どもの生活・学習支援事業」6か所実施(7月現在)〔県・健康福祉課資料より〕
群馬県が実施する生活困窮家庭の子どもたちへの支援が、各地のNPO法人への委託事業として、現在以下の6か所で具体化されています。対象はすべて「中学生」です。
  1. ① 吉岡町会場(吉岡町文化センター等):毎週木曜日19:00-21:00
  2. ② 玉村町会場(まちなか交流館スマイル):毎週水曜日 18:30-20:30
  3. ③ 東吾妻会場(中之条町・コミュニティハウスひまわり):毎週土曜日 13:00-17:00
  4. ④ 利根郡会場(会場・日時など未定:応募者の希望を考慮して進める予定)
  5. ⑤ 東邑楽会場(明和町中央公民館):毎週木曜日 17:00-19:00
  6. ⑥ 大泉町会場(ぐんまみらい信用組合の建物2階):毎週金曜日 18:00-20:00


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