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 第75号(全12ページ)からの転載です。

パートナー通信

パートナー通信タイトル
2018年10月/No.75(通算91号)

書籍の紹介

こどもの人権をまもるために
木村草太編(晶文社、1700円+税)

 編者の木村草太氏(憲法学)は「はじめに」の冒頭でこのように述べています。

 「子どもには人権があります」と言われて、それを否定する人は、ほとんどいないでしょう。しかし、「子どもの人権が保障されている状態とは、どんな状態なのか」と具体的に考えると、「子どもの人権」の内容は急にあやふやになります。「子どものため」と言いながら、大人にとっての「管理の都合」ばかりが優先されているのではないか、と感じてしまう場面が多々あるのです。
 (中略)
 どんな本を作りたいかと考えたときに、「子どもの人権」について抽象的な理念を掲げる本では、恐らく意味はないだろうと感じました。子どもと直に接しながら、子どもにとって本当に必要なことについて考えたことのある人のお話を集めた本にしたいと考えました。
 つまり、この本のコンセプトは、「子どもだった頃、こんな大人に出会いたかった」です。

 この本の構成と執筆者は以下のとおりです。

  • 序章 子どもの権利 理論と体系(木村草太)
  • 第1部 家庭
      第1章 虐待(宮田雄吾)
      第2章 貧困(山野良一)
      第3章 保育(駒崎弘樹)
      第4章 10代の居場所(仁藤夢乃)
      第5章 障害(熊谷晋一郎)
      第6章 離婚・再婚(大塚玲子)
  • 第2部 学校
      第7章 体育・部活動(内田良)
      第8章 指導死(大貫隆志)
      第9章 不登校(大原榮子)
      第10章 道徳教育(前川喜平)
      第11章 保健室(白濱洋子)
      第12章 学校の全体主義(内藤朝雄)
  • 第3部 法律・制度
      第13章 児童相談所・子どもの代理人(山下敏雅)
      第14章 里親制度(村田和木)
      第15章 LGBT(南和行)
      第16章 世界の子ども(土井香苗)
  • 終章 子どもの権利を考える(木村草太)

  まだまだ限られた範囲での活動しかできていませんが、自分自身の群馬子どもの権利委員会の活動をとおして見ても、子どもたちの権利にかかわる状態には、極めて深刻な実態があると感じています。一方で、その困難な実態を克服しようと心を込めて奮闘している人たちの姿をたくさん見ています。各章で述べられている課題と展望は、これからの群馬子どもの権利委員会の活動を具体的に考えるうえで多くの示唆を与えてくれていると考えます。
 木村氏は最後にこのように述べています。

 しかし、各氏の論稿では、たびたびこの条約に言及がある。しばしば、提起された問題について「まさにその条文が必要だ」という的確な条文があったりする。抽象的には理解できている法原理でも、個々の具体的場面でどうすべきは曖昧になることもある。抽象的な原理原則だけでなく、具体的で細々としたことを一つひとつ条文に書いていくことが、現場にはとても重要なのだ。  この条約は、今後の子どもの権利の実現に活用されなければならない。条約の意義を適切に理解できていなかったことを深く恥じるとともに、子どもの権利の大切さを改めて教えてくれた各氏に心より感謝申し上げる。

  ここで言われている「この条約」とは、皆さんもお分かりのように『子どもの権利条約』ですね。

           
(加藤彰男)


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